恋愛境界線
「…ああ。もちろんだ」

私は、隼人さんからその言葉が聞きたかったんだよ。



「これから、よろしくお願いします」

私は改まって深々と頭を下げる。

「俺こそ。
不規則で休みもとりにくい仕事だから、
なかなか会う時間がとれないかもしれないが、
それは大丈夫か?」

「それは仕方ないですよ、仕事ですし。
寂しくても、少しは我慢します」


「…そうか。だったらこれ」

隼人さんが白衣のポケットから何かを取り出し、私の手のひらに乗せる。

「これって…」

「俺の家の合鍵」

「隼人さんの家の!?」

「ああ。
ここから歩いて10分くらいのところにあるマンションだ。
俺がいないときでもいつでも行っていい。
殺風景な部屋だから、好きなものを買ってカスタマイズしてもらっても構わない」


「そ、そんな大事なもの、付き合って1日も経っていない私に渡していいんですか…?」

「君…いや、雪花だから渡してるんだ」


私はドキドキしながら、手のひらに乗っている合鍵をまじまじと見つめたあと、
合鍵をぎゅっと握りしめる。
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