恋愛境界線
「…ありがとう」


私を不安にさせないために、そこまでしてくれるんだ。
隼人さん、私のことちゃんと考えてくれてるのね。

「…いきなり合鍵渡されて、引かないか?」

「何でですか?」

「いきなり部屋の鍵渡されたら、
定期的に部屋に来いって言ってるんだなって思うだろう?
だから…その、身体目当てだと思われていたらと思って」

隼人さんの思わぬ言葉に私は我慢できず吹き出して、声を上げて笑う。


「思わないですよ!
そんな人じゃないって、分かってますから。
心配しすぎですよ。
むしろ私を不安にさせないためにそこまでしてくれるんだって、嬉しかったです」

隼人さん、心配性なのかな?


「"不安にさせないために"と言うのは少し違う」

「そうなんですか?」

「単なるインドアなのもあるが、会う時間が取れても、いつ病院に呼び出されるかわからないからな。家にできるだけいるようにしている」

医者って、そんなに大変なんだ。


「なるほど。じゃああんまり一緒に出掛けたりはできないですね」


"先生"のときは、堂々としすぎ!ってくらい普通に歩いてたなあ…
ああ…また"先生"のこと考えてる。
駄目だ。


「あと…」

隼人さんは私をほうを見て、言葉を続ける。
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