恋愛境界線
別館3階の一番奥。
私は扉の前で立ち止まる。
ここに来るのは1ヶ月ぶりくらいか。
先生、どうしてるだろう。
何度かノックをしようとして、手を止める。
どうしても勇気がでない。
どんな顔をして会えばよいのだろう。
ーーーガラッ!
思いがけない大きな音に思わず肩を震わせる。
「あ…」
ドアが開き目の前に急に現れた先生に、私は思わず声を漏らす。
まさか、覚悟が決まる前に部屋から出てきてしまうなんて。
「あっ…」
先生も私をみて同じように声を漏らす。
私がドアの前にいるなんて思わなかったのだろう。
「どう…した?」
先生はそう私に訊ねる。
明らかにどう接していいかわからず、動揺しているようだった。
「ちょっと…話があって」
私は言葉を詰まらせながらそう伝える。
ああ…目が合わせられない。
「そうか…じゃあ入って」
そう言って先生は私を部屋に招き入れる。
「…はい」
私は先生の言葉に頷いて、ゆっくりと社会科準備室に足を踏み入れた。