恋愛境界線
「何だ、話って」
先生はいつもの椅子に座って、私に訊ねる。
ああ。
ここで、私と先生は…
あのときのことがフラッシュバックして、さっき再び現れた胸のもやもやに支配される。
「…部活のことなんですけど」
「辞めたい?」
「…はい」
私がそう返事をしたあと、先生は何も話さなくなり私たちの間に微妙な空気が流れる。
沈黙が辛い。
先生といるときにそんな風に思ったのは初めてだった。
「僕が顧問なのが嫌?」
そう言って真っ直ぐ私の目を見つめる。
その目に私はドキッとする。
見つめられると、先生のペースに巻き込まれてしまう。
私は先生に勝てない。
でも駄目だ。
奏のときと同じようになってはいけない。
「違います」
私ははっきりとそう答える。
「だって星が嫌いになったわけじゃないだろ。だったら僕のことが嫌で…」
やめてよ。
なんで?
何で、そんな責めるような口振りなの?
「違います」
今度はさっきより強めの口調で答える。
不機嫌な顔。
先生は表情に感情が出すぎなのよ。
「それ以外考えられないだろ」
…何でなの?
なんでそんなふうに言うの。
「ちがうって…」
違う。違うんだよ。
私は…
わたしはあなたが…ーー!