恋愛境界線
目の前に差し出された指輪は、
中心に小さなダイヤモンドらしきものが埋め込まれている。

隼人さんは"そんなに高いものじゃない"って言っていたけれど、きっと高いんだろうなあ。


いつかこんなときが来たらって、
ふとした瞬間に隼人さんとの未来を想像したことがある。
私は泣いて喜んで受け入れるだろうって思っていた。

嬉しくないわけじゃない。
言葉にならないくらい嬉しいわ。

なのにいま実際その場面になって、
迷っている自分がいる。

本当に、受け取っていいんだろうか…って。






「…忘れられないか」


「え…」


指輪を目の前にして固まる私に、隼人さんはそう言った。


「あいつのこと、まだ好きか」


「そんなこと…っ!」


隼人さんは哀しそうな、どこか寂しい表情をする。



「違うの。そんなんじゃ…」


"絶対違う"って言い切れるはずなのに、何で私はこんな気持ちになるの?
隼人さんのことを、こんなにも想っているのに。
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