恋愛境界線
第16章 寄り添う二人、夕暮れのベンチ


「おはよう!雪花ちゃん」


「おはよう、しーちゃん」


下駄箱前で靴を履き替えていると、後ろからしーちゃんに声をかけられる。
朝が弱い私は、いつも元気で明るいしーちゃんを羨ましく思う。


「今日は朝から体育だよ~最悪!体育ある日っていつも以上に疲れるよね」

「本当に。午後の授業が眠いよね」

「そうそう!」


そんな会話をしながら廊下を歩いていると、ふと前から歩いてくる人が目に入る。
しーちゃんも気づいたらしく、手を上げてその人の方へと遠くまで響く声を発する。



「本郷せんせー!おはようございますっ!」


しーちゃんの声に反応して、先生は私たちの方を見る。


「おはよう」


そう言って先生は笑う。
一瞬目があったような気がしたけれど、すぐ逸らされる。


「おはようございます」

私がそう言うと、

「おはよう」

と、先生は返す。
先生と生徒の当たり前の光景だった。

挨拶を交わすとすっと横を通りすぎて、先生は職員室に入っていく。
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