恋愛境界線

「資料、助かったありがとう」

私は隼人さんに手を引かれ、病院の裏庭に置いてあったベンチに2人で腰掛けた。

「ううん。全然大丈夫よ」

人気は多くはないが、たまに散歩で入院患者が通り私たちの方をちらっと見る。

見られちゃってるけど、隼人さんいいのかな。
離すどころかさっきよりも手を握る力が少し強くなった気がする。

「指輪」

「うん?」

「今日はつけてないのか」

「ああ。学校にはつけていけないから長めのチェーンを通してネックレスにしてるの。
ちゃんと持ってるよ、ほら」

空いているほうの手で首もとから、チェーンを通した指輪をシャツの中から取り出す。
貰ったばかりの指輪は、太陽の光に照らされてキラッと輝いた。

「貸して」

そう言うと隼人さんは、私の首の後ろに両腕を回し、チェーンを外す。
指輪を手に取ると、私の左手薬指にゆっくりとはめる。
薬指の指輪を見ると、まだ慣れないからかドキドキする。

「学校以外ではいつもつけておいてほしい」

「わかった。学校を出たらすぐつける」

「…本当は男が寄ってこないように、学校でもずっとつけておいてほしいんだが」

「私、全然モテないから大丈夫よ」

「雪花を狙っている奴がいるかもしれないだろ。
同級生の男が寄ってこないようにはそうなんだが、一番は…」

隼人さんはそう言いかけてやめる。
私はその内容を言わずとも察する。
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