恋愛境界線
「ネクタイ、今着けてるやつと交換していい?」

「ああ。もちろん」

「あとネクタイの巻き方、教えて!」

「これから結んでくれるのか?」

「彼氏のネクタイ結ぶのって、なんか彼女っぽくない?憧れだったんだよね」

「彼女っていうか、奥さん?」

「そう言われたら…照れるなあ」





そんなバカップルみたいな会話を交わしていると、隼人さんの携帯の着信音が鳴り響く。

「呼び出しだ。そろそろ戻らないといけない」

「うん。じゃあ私帰るね」

「悪い。少ししか一緒にいられなくて」

「ううん。少しでも会えてよかった!」

「次会えるのは、週末になるかもしれない。また連絡する」

「わかった」


そうやって隼人さんは背を向けて、病院の入り口のほうへと急いでもどっていく。

その背中を見つめて思う。




ああ。

いつか白衣の隼人さんと並んで、病院の廊下を歩けたら。

聴診器を首からさげて、
白衣を着た私と隼人さんの姿を想像してしまう私がいた。
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