恋愛境界線
「雪花」
名前を呼ぶ声に、私は我に返る。
目の前にはワイシャツを着た隼人さんが立っていた。
「あ…隼人さん、おかえりなさい。
全然気づかなかった」
「ただいま。声をかけたんだが、反応がなかったから」
「そうなの?ごめんなさい」
隼人さんが帰ってきたのに気づかないくらい、私は考えこんでいたのだろうか。
「雪花、肉焦げてる」
「え!?うそ!あつ…っ!」
慌てて火を消そうとして、フライパンの端に手があたり熱さに悲鳴をあげる。
「大丈夫か!はやく水で冷やせ」
隼人さんは私の手をとると、水道の蛇口をひねって水をあてる。
「…ごめんなさい。お肉だめになっちゃった」
「いい。それよりはやく手当てしよう」
今日の食材、だめにしちゃった。
何してるんだろう、私。