恋愛境界線
「大胆ね。あんなことしておいて“もう関係ない”なんて、良く言えるわね。少し頭を冷やした方がいいようね」

小川先生は冷たく言い放って、立ち上がると、私の荷物から携帯を手に取る。
そして私の携帯を手にしたまま、扉から出て勢いよく閉める。

「ちょっ…小川先生!」

立ち上がろうとすると、右足がズキッと痛む。さっき倒れたときに、足を捻ったせいだ。

私は床を這って扉の前に行き、扉を開けようとするが、つっかえ棒か何かを挟んだようで開かない。

「今日1日、そこで頭を冷やしてなさい。大丈夫よ。朝になったら誰か来るわよ。携帯も明日返してあげる」

「教師がこんなことして…」

「ああ、私が閉じ込めたって言ったら、本郷先生とのことばらすから。そして、本郷先生にはもう近づかないで。私のものだから、いいわね?」

この人…とんでもない女だ。
でも、ばらされるのはまずい。

秋には担任から医学部の推薦入試の受験も受けるよう勧められているし、先生だって、ばれたらこの学校にもいられなくなる。

「大人しくなったわね。じゃあね、私帰るから」

小川先生の靴音が、だんだんと扉の前から離れていく。

「ちょっと!開けてよ!」

しばらく扉を叩きつづけていたが、手も痛くなり私は叩くのをやめて、扉を背にして深いため息をつく。

朝までここで閉じ込められたまま、か…
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