恋愛境界線
…コツコツコツ……
廊下から誰かの足音が近づいてくる。
もしかして、巡回の警備員の人?
これは、ここから出られるチャンスじゃない?
私は我に返り、数学科準備室の扉を思いきり叩いた。
「すみません…!助けてください!」
私がそう叫ぶと、廊下から聞こえた足音が数学科準備室の扉の前でピタリと止まった。
良かった、これで出られる…
「…もしかしてその声、雪花?」
扉の向こうから聞こえてきた声。
まさか、こんな偶然あるんだろうか。
「もしかして、先生?」
先生がこんな時間まで残っているだなんて、思いもしなかった。
「何してるんだよ、こんな時間に。しかも数学科準備室なんかで」
「先生のせいでしょうが!!」
そう叫ばずにはいられらなかった。
きっと先生はなんのことかさっぱりでしょうね。
「僕のせいって、どういうことだ?」
「あとで説明するから!とにかく扉につっかえているもの外して!」
「あ、ああ」
先生が扉のつっかえ棒を外してくれたお陰で、扉に手を掛けてスライドすると、目の前に先生の姿が現れた。
久しぶりに、目の前でちゃんと先生の姿を見た気がした。
「本当に…厄介な人だなあ…」