恋愛境界線
「何か、懐かしいな」

保健室で私を椅子に座らせ、先生は私の右足を氷で冷やしながら、少し微笑む。

「懐かしいって?」

腫れた足に冷たい氷って、なかなかしみるなあ…。

「ほら、雪花の転校初日にさ、僕が捻挫したじゃん」

「ああ、たしかにね。あの時はこき使われたなあ」

あの日からもう、1年以上経つんだなあ…。

「その時と、逆だな」

「…そうだね」

会話が途切れると、気まずい空気が流れる。
何話したらいいかわからないよ。



「…指輪」

「え?…ああ…」

そういえば、薬指に指輪をはめたままだった。

思わず左手薬指を、右手で覆う。

「兄貴らしいな」

先生はそう言って笑う。

「雪花とのこと、真剣に考えているのがよくわかるよ」

「…隼人さんは真面目だから」

あんなに誠実な人…どこを探してもいない。

「だな。…僕と違って」

「本当に。」

本当…見た目は似ていても、真逆の性格の兄弟ね。
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