恋愛境界線
「僕は、雪花と出会う前から、180度変わったよ」

「そうなの?」

「うん」

先生はそう言って右手で、私の頬にそっと手を伸ばす。

…あたたかい。


「出会わなかったら、僕はずっと社会科準備室に閉じこもったままだったよ。だから…この学校に、転校してきてくれてありがとう」

ああ…もう。

その笑顔、ずるい。



確かに先生と出会った頃、いつもどこか哀しそうな表情をするときがあった。

でも今は、それを感じなくなった。
今の笑顔も、心から笑えているように感じる。

過去に囚われずに、前を向けるようになれたのなら、本当に良かった。

先生には、婚約者を亡くして辛い思いをした分、幸せになってほしいと思う。





…私は、その気持ちに応えられないけれど。



その思いとは相反した、この先生への感情には、気づかないふりをする。

それでいい…。
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