恋愛境界線
「…セクハラ」

「え?」

「この右手、セクハラ」

「は!?ちょっと触れただけじゃん!」

「いやいや、触ってるし。なんならこの前職員室で抱き締めてきたのもセクハラだよ」

「あれは…雪花が泣くからなぐさめたんだろ!!」

「…隼人さんにセクハラされたって言いつける」

「ちょっ…!兄貴出すのは反則だろ!?殴られ…いや、殺されるわ!!」


スクールバッグから携帯を取り出そうと手を伸ばすが、ハッとする。
そう言えば、そうだ。

「…って、携帯取られたんだった」

隼人さん、心配してるよなあ…。


「先生、携帯貸して」

先生の携帯から私がかけるなんて、隼人さんまた落ち込むかもしれないけれど、いまは仕方がない。

あとで事情を話せばわかってくれるはず。

「兄貴に連絡するのか?」

「今日、会う約束してたから、連絡とれなくて心配してるだろうし」

「…そうか。ほら」

先生から携帯を受け取り、隼人さんの番号に発信する。

呼び出し音がしばらく続いたあと、通話が始まった。
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