恋愛境界線
「じゃあ出発するぞ」
「うん」
夜22時半。
先生は車のエンジンをかけると、学校をあとにする。
辺りは真っ暗で、人通りもほとんどなさそうだ。
「道も空いているだろうし、23時頃には着くと思う」
「うん」
2人きりの空間。
保健室でもそうだったんだけれど、狭いからか車だと余計そう感じて、さっきよりも緊張する。
この空気に耐えられなくて、私は窓の外へ目を向ける。
ここにいると、どうしても初デートで行ったレストランや海でのことを思い出してしまう。
あの時は本当に緊張したなあ。
「こうやって2人で車に乗ってるとさ」
「うん?」
「初デートの日のこと、思い出さないか?」
ああ。
先生も、同じこと考えてたんだ。
「結局、付き合ってデートしたのはあの1回だけだったな」
「そうだね。ダッシュボードに写真を入れてるのは迂闊すぎだよ」
「うっ…ごめん。まさか開けるとは思わず」