恋愛境界線


「雪花?」

車の前で待っていた先生は、足を引きずりながらマンションから出てきた私を見つけて駆け寄ってくる。

「兄貴は?どうしたんだよ」

「…」

私はマンション入り口の階段に、力なく座り込む。

「雪花、兄貴と何かあった?」

「…振られちゃった」

「え?」

先生の顔をみたら、涙が一気に溢れて私の
太ももにぼたぼたと零れる。

「兄貴が、雪花のこと振ったってこと?」

「…」

「兄貴と話してくる」

「駄目!」

私は先生がマンションに入ろうとするのを、足を掴んで引き止める。

「だって…!兄貴、雪花のことあんなに…」

「私が、全部悪いの。私が…わたしが…」


先生を、忘れられなかったから。




「先生、家まで送ってくれる?私、ちゃんと歩けないから」

「…ああ、もちろん」
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