恋愛境界線
なんで。

そんな切ない、寂しそうな眼差しで私を見るの?
そんな先生の目が、ずっと頭にこびりついて離れない。


これ以上一緒にいたら私、この人のこと……






「……それでさー!」


外から声が聞こえてきて、私は我にかえる。
誰かが課題ノートを提出しに来たんだ。

「じゃあ私、部室行きま…」

「こっち」

私は手を引かれてついたての向こう側へ連れていかれ、さっきまで先生が座っていた椅子に座らされる。

椅子には先生の体温が残っていてあったかい。

「せん…」

「静かに」

女の子2人の笑い声が部屋に近づくにつれ、心拍数が増していく。

2人が部屋の前で数秒間立ち止まると、すぐに笑い声が遠くなっていった。

私は胸を撫で下ろすが、疑問が浮かぶ。

「何で入ってこなかったんだろう」

「部屋の前に課題ノート提出用のカゴを置いてるからね」

「ああ、なるほど………ん?」

私は目を丸くする。

「授業の最後に言っただろ?”課題ノート未提出の人は準備室の前にカゴを置いとくから入れといて”って」

全然聞いてなかった…
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