恋愛境界線
「じゃあ、わざわざ入ってこなくて良かったんだ」

そう言えば、準備室の扉の横にカゴが置いてあったような…

「そんなに僕に会いたかったんだ?」

「そんなわけないじゃないですか…!」

私がそう言うと、先生は声をあげて笑う。

「冗談だよ」

ちょっとドキッとしちゃったじゃん。
先生のばか。


「先生って、本当に意地悪」

「赤坂が可愛いのが悪い」

「またそんなこと言う」

「本当だって」


先生と目があうと、反射的に目を逸らす。

”可愛い”なんて、ほとんど言われたことなくて、耐性がないからなのかな。
顔が熱い。

先生は何でそんなに恥ずかしげもなく言えるのだろう。




「…あのときと逆だな」

先生が私の座っている椅子に右手を添える。

近い…

狭い部屋。
逃げ道を塞がれて、逃げられない。

「思い出させないでくださいよ」

つい先生の唇に目がいくが、我にかえって目を逸らす。
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