恋愛境界線
こっちを見ようとしない先生の背中を、私は思いっきり抱きしめる。


「私、医学部受かったよ」

「おめでとう。雪花から受かると思ってた」

「隼人さんにも…伝えてきた」

「…そうか、兄貴喜んでただろ」

「うん。あんなに傷つけたのに、心から喜んでくれた」

「兄貴はそういうやつだよ」

「そのとき聞いたの。先生が学校辞めるって」

「…なるほどな」


先生。こっち見てよ。


「私、来月から大学生になるよ」

「女子大生だな」

「そんなに遠くないし、実家から通うことにした」

「雪花の家からなら余裕で通えるもんな」

「それで、サークルは天文サークルに入るんだ。高校では辞めちゃったから」

「僕のせいだな、ごめん」

話せば話すほど声はかすれ、涙が零れ、先生のワイシャツに滲んでいく。


「でね、夏休みや冬休みには、星を見に行きたいの。
アルバイトをして、お金を貯めて。世界中の星が綺麗な場所に旅行にいきたい」

「それはいいな」

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