恋愛境界線
「…ニュージーランドに星が綺麗な場所があるんだ」

「え…」

「大学の夏休みに、一緒に行こっか」

そう言って、先生は私の目から指で涙を拭う。

以前付き合っていた頃みたいに
どこか遠くを見つめるような目じゃなくて

ちゃんと、目の前にいる私を見つめて
笑ってくれていた。

「ほん…とう…?」

「うん。だから笑って、雪花」

泣きじゃくる私の頭を、先生は小さい子供をあやすように優しく撫でる。

その手はあたたかくて、荒れた波が穏やかになっていくように、自然と心が落ち着いてくる。



ああ。

いまやっと、本音で向き合えたような気がする。

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