恋愛境界線
「…いつか、こんなときが来るんじゃないかと思ってた」
奏は呟く。
「え…」
意外な言葉に私は目を丸くする。
どういうこと?
「雪花が俺のことを好きじゃないことはわかってんだ、ずっと。告白するずっと前から」
「そんなこと…ないよ?」
「雪花の”好き”は幼馴染み…弟としての”好き”だろ?」
ズキン…
「告白する前、すごく悩んだ。この気持ちを伝えるべきか、ずっと胸にしまっておくべきか。
けど伝えようと思ったのは、告白しても断られない自信があったからだ。
雪花に好きな人はいない。
だったら俺を嫌いじゃない限り、俺の気持ちを受け入れる。
そう確信していた。
昔からずっと一緒にいたから、雪花の性格を知り尽くしていたしな。
案の定、雪花は俺の告白を受け入れた。
ここまでは俺の読み通りだった。
そして雪花と付き合うことに成功した。
ずるいだろ?俺。
雪花の性格を利用したんだ」
「奏…」
奏はこちらを一切見ずに、うつむいたまま話を続ける。
「”付き合ってからだんだんと好きになってくれるだろう”
そんな風に甘く考えてた。
けど…雪花の中で俺は”弟”のままで、”弟”から”恋人”になれなかった。
悩んでいた矢先、雪花が引っ越しをすることになって、離ればなれになるって知って焦った。
向こうで誰か好きな人ができたらどうしようって。
まさかこんなに早く、その日が来るなんてな」