恋愛境界線
静まり返った廊下。
部活をしている生徒もほとんどいなくなった午後6時。
陽も落ち、あたりは暗くなりはじめていた。
別館3階の一番奥。
社会科準備室の前に立ち止まり、ドアをノックして開ける。
「先生…いる?」
そう声をかけると、仕切りの奥にいる先生の影が動いた。
「いるよ」
その声を聞いて、私は胸を撫で下ろす。
「ちゃんと、別れてきたよ。奏と」
「そっか」
先生は静かにそう答える。
「話してて気づいたの。
私、いままでちゃんと奏と向き合ってこなかったんだって。
奏は私のことを理解しようとして、ずっと支えてくれていたのに、
私は…10年も一緒にいたのに、奏のこと何もわかってなかった。
それだけじゃなくて、他の人を好きになって奏を傷つけて。
最低な彼女だったな、私。
なのに、奏は最後まで優しくて…」
奏と別れて学校に着くまでの道中、私は涙が止まらなかった。
涙を拭うのに、ずっと枯れることなく溢れてくる。