恋愛境界線
「やだ!」

私は全身全霊で先生を突き放す。
すると先生はバランスを崩して椅子から転げ落ちて、床に倒れこんだ。

先生ははっとした顔で、私の方を見る。

「最低!」

私は唇を手で擦りながら涙をぽろぽろ溢す。
寝ぼけているにもほどがある。

「ごめん!僕、なんてことを…!」

「なんてことをじゃないわよ!転校初日になんてことをしてくれてるのよ!」

「転校…て、ことは君が…」

「赤坂雪花(あかさかせつか)よ!あなたのクラスに今日転校してきたの!」

「君が赤坂さんか。僕は担任の本郷雄飛(ほんごうゆうと)です。よろしく…ってできるわけないか」

「何のんきに挨拶してんのよ!仲良くできるわけないでしょうが!馬鹿じゃないの!彼氏だっているのに…」

再び涙がぽろぽろと零れると、先生はあたふたしながらポケットからハンカチを取り出して私に差し出す。

「要らない」

何で初対面で会った人と、しかも先生とキスしなきゃならないの?
奏にどんな顔して会えば良いの…
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