恋愛境界線
駅前に着いたのは9時57分。
待ち合わせの3分前。

先生もう待ってるかな?

あたりを見回していると、手に持っていた携帯が鳴る。
先生から電話だ。

「もしもし?」

「おはよう」

いつもの先生の声なのに、今日は一段とドキドキする。
初デートで気持ちが高ぶっているからかな。


「おはよう。今どのあたり?」

「雪花のうしろ」


そう言われて振り向くと黒い車が停まっていて、その前に先生が立って私に向かって手を振っていた。

ちょっと先生…!堂々としすぎでしょ!

私はあたりを見回しながら早足で先生の方へと向かう。


「誰かに見られたらどうするの!学校の人がいるかもしれないのに」

「大丈夫だって。それより、私服初めて見た。いつもそんな感じなんだ」


私の方を見て、先生はなにも言わず見つめてなにも言わない。

もしかして、ワンピースあんまり好みじゃなかった?


「だめ?」

「ううん。超可愛いし、すごく好み。似合ってるよ」

「…ありがとう」

良かった。
険しい顔してたし、好みじゃなかったのかと思った。

私はあまりにも褒めるので、照れながらお礼を言う。

「先生はいつもそんな感じ?」

「まあね。だいたいシャツに黒ズボンかな。そんな学校のときと変わらないでしょ?」

「そんなことないよ。やっぱり私服だと雰囲気違うもん」


先生はじゃらじゃらとアクセサリーを着けるわけではなく、とてもシンプルな服装だった。

もともとスタイルは良いし、下手にお洒落をするよりもシンプルな服装がぴったりだった。

…普通に格好いい。

でも髪だけはワックスをつけて整えているみたいだった。
デート仕様かな?


「スーツと私服、どっちがいい?」

「…どっちも」

「ははっ。そう言うと思った」

そう言って笑うと、先生は助手席の扉を開けてくれる。
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