恋愛境界線
「せ……じゃなくて、ゆ、雄飛って眼鏡かけるの?」
先生は車を発進させる直前に、ケースから黒縁の眼鏡を取り出す。
「ああ。運転するときだけな。普段はなくても問題ないからかけないけど」
「そうなんだ…」
緊張するな…。
いつも二人で何話してたっけ?
運転をしている先生の横で、私はちらちらと横顔を見つめる。
眼鏡めっちゃ似合ってるし、男の人が運転している姿ってこんなに格好いいんだ…
大人の男性って感じがする。
なのに私、こんな子供っぽい格好で大丈夫かな?
そもそも見た目が子供っぽいのに。
もっと大人っぽい服、買っておけば良かった…
「そんなにじっと見られたら恥ずかしいんだけど」
「え!?」
私、そんなに見てたかな?
無意識?
「ごめんなさい!運転に集中できないよね」
「いや、それは全然大丈夫。それより何考えてたの?黙りこんで」
「え!?いや、別になにも…」
そんなに顔に出てるのかな。
恥ずかしい。
「大丈夫だよ。
さすがに初デートでいきなりホテルに連れていって、押し倒したりしないから。
手加減しないとは言ったけど、僕も一応大人だからさ、そのあたりは雪花のペースに合わせるから」
「わ…わかってるよ!」
なんだ…そっか。
「期待してた?」
先生はまた意地悪な顔をして笑っている。
そんな先生を見て私は顔を赤くする。
「してない!」
そういって私は頬を膨らませて、そっぽを向く。
私が怒るのを見て、先生は満足そうに笑っていた。