恋愛境界線


「うわあ…美味しそう!」

車で3時間走ったあと、私たちは車を停めてお昼ご飯を食べるためにレストランに入った。

ハンバーグが美味しいお店らしく、事前に調べて予約してくれたらしい。

「朝から何も食べてないからお腹すいたでしょ?食べよう」

「うん!いただきます!」

私はチーズハンバーグ、先生はデミグラスソースのかかったハンバーグを頼んだ。

私はハンバーグを一切れ食べて、その美味しさに驚く。
口の中で肉汁が広がった。

「美味しい!何これ、いままで食べた中で一番美味しい!」

「本当?良かった」





美味しくて箸が進むなか、私が半分くらい食べ終わっても先生は食べはじめる気配はない。

「食べないの?」

私がそう訊ねると、先生は私を見つめて笑う。



「…美味しそうに食べてるのを見てるだけで胸がいっぱいで、食べるのを忘れてた」



"胸がいっぱい"って…どういう意味?



「何それ」

私が不思議そうな顔をしているのを見て、先生ははっとしたような顔をする。



「…ごめん、何でもない。さあ、食べよう!」

先生はそう言って箸を手に取り、笑顔でハンバーグを食べ始める。

「…」




気のせい…なのかな。
今日は一段と、先生の笑顔が寂しそうなのは。



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