恋愛境界線
「わあっ!冷たい!」
波は勢いよく砂浜にやってきて、波打ち際を歩く私の足を濡らす。
「そんな波打ち際歩くからだよ」
私たちは昼ご飯を食べて水族館を回ったあと、海辺にやって来た。
あたりは陽が少しずつ落ち始めてきていた。
「ほら、濡れるからもっとこっち来て」
右側を歩く先生が私の肩を抱き、自分のほうに引き寄せる。
「あ…」
抱き締められる形になり、私は先生の胸にすっぽりと収まる。
先生の身体、あたたかい。
まだ肌寒い海辺で、波打ち際を彼氏と歩いて抱き合うなんて、まるで恋愛ドラマのワンシーンのよう。
ドラマのヒロインになったように私の気持ちは高揚し、胸は高鳴る。
先生の心臓の音が聴こえる。
私の心臓の鼓動がどんどん速くなっていっていること、先生は気づいているかな。
「雪花」
そう呼ばれて見上げると、先生が私を真っ直ぐ見つめていた。
射ぬかれてしまうんじゃないかと思うほど、真っ直ぐに。
「せん……ーーー」