恋愛境界線

"先生"


そう呼び終わる前に、私の唇に先生の唇が重なっていた。


いつもの激しいキスと違って、壊れ物を扱うように慎重で、とても優しいキスだった。




せん…せい?

感じていた違和感。
やっぱり、今日の先生は少し変だ。






何度か唇を重ねたあと、先生は私の頭をそっと撫でて笑う。



「冷えてきたね。車戻ろうか」


「…うん」


先生は私の肩を抱いて、私たちはゆっくりと車の方へ歩き始める。



"どうしたの"

そう声に出そうとして言葉を飲み込む。

聞けない。
聞いてはいけない気がする。


先生がそんな表情|《かお》をする理由は何?


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