恋愛境界線
電車に揺られ2時間と少し。
私は前の家の最寄駅の改札を出る。
するとそこには大きな柱の前にもたれ掛かり、携帯画面を見ながら待つ男の姿があった。
改札を出た私に気づくと、ポケットに携帯を片付けてこっちに向かって歩いてくる。
「よう」
「…うん」
挨拶を交わしたあと、私たちの間に微妙な空気が流れる。
そりゃそうだ。
なんせ1週間前に別れたばっかりなんだから。
「とりあえずそこの公園行くか」
「…うん」
「ほら」
奏が私に左手を差し出す。
あ…
私が戸惑っていると、奏ははっとした顔で手を下げる。
「悪い…つい癖で。行こう」
「…うん」
奏が歩き始めた背中を追いかけて、私も歩き始める。