恋愛境界線
「何があった?」
しばらく無言で歩いたあと、奏が控えめに私に訊ねる。
「うん…」
知ってしまったことを伝えようとしても、どうしても言葉にならない。
というか、言葉にしたくない。
私は黙りこんで、足元をみつめる。
何て言ったらいいのだろう。
そんな私を見て、奏は言う。
「いいよ、言えるようになってからで。明日も休みだし、いっそのこと明日でも」
私の気持ちを察したのだろう。
奏には私の気持ち、お見通しだ。
「そこ座ってて。飲物買ってくる」
公園に着き、ベンチに私を座らせたあと奏はそう言い残して走っていく。
そして私は深いため息をつく。