恋愛境界線
「雪花」
私が公園から出ていこうとしたとき、呼び止められ足を止める。
それから、先生はとうとう沈黙を破り話し始めた。
「君に初めて出会ったとき、
僕は居眠りから目を覚ましたばかりで、
まだ夢の中にいるつもりで
君を…写真の彼女だと思ったのは事実だ」
やっぱり、そうだったんだね。
「そして…こう呼んだ。”優姫|《ゆうひ》”って」
あの人、優姫さんって言うんだ。
奏の腕を握る手のひらが汗ばんでいく。
「彼女とは、高校2年生のときに出会ってから付き合って、大学を卒業してから…婚約した」
先生、婚約…してたんだ。
奏はだんだん汗ばんでいく私の手を掴んで、強く握る。
「そして24歳のとき、結婚することになって結婚式を1ヶ月前に控えたときのことだった。
彼女、車の前に飛び出して轢かれそうになった子どもをかばって…死んだんだ」