恋愛境界線


「…赤坂さん、誰かと勘違いしてないか」

「え?」

はっとして、私は目の前の背中を見つめると…白い着衣。白衣だ。

その人はお医者さんだった。
本郷先生じゃない!?

「え!ごめんなさい!」

私はすぐに手を離して、お医者さんから離れる。

「本当にごめんなさい。いきなり泣いて、抱きついたりして…」

恥ずかしい。
この人がちょっと先生に声が似てたから、先生が来てくれたって勘違いして。
そんなわけないのに…


私は目に溜まった涙を拭うが、全然涙がとまる気配はない。
私…最近涙もろいなあ…



「大丈夫か」

そう言ってお医者さんは、ポケットか黒のハンカチを取り出して私に差し出す。

「ごめんなさい。ありがとうございます」

そう言ってお礼をいい、ふとお医者さんの顔を見た瞬間だった。

その瞬間だけ、時が止まった気がした。
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