恋愛境界線
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「暇だなあ…」
入院生活2日目。
病院は暇!この一言だった。
腕には点滴が繋がれているし、身体が弱っているから安静にって言われてるし。
とにかくやることがない。
”本郷先生”、忙しいのかな…
昨日はあれから来てくれなかったし。
暇だと色々考えてしまう。
ほとんどは”本郷先生”のことなんだけど。
「赤坂さん、採血の時間ですよ~」
ドアのノックとともに、私の担当看護師の今田さんが入ってくる。
ベテランの看護師さんなので手際よく準備をして、私の血管に注射針をさす。
「”本郷先生”って忙しいですか?」
聞くつもりはなかったのに、そんな言葉が口からこぼれる。
「本郷先生は今日は外来に出てるわよ。今日も忙しいそうで、お昼ご飯も食べれないほどに」
「そんなに忙しいんですか?」
「いっつもよ。先生方は慣れているから大丈夫よ」
針を抜いて患部を止血する。
さすがベテランの看護師さんで、全く痛くない。
「赤坂さんも本郷先生のファンになっちゃった?」
「い、いえ私はそんな…人気なんですか?」
「あの容姿でしょう?ちょっと堅物なところはあるけど、やっぱり女性の患者さんから人気よ。でもあんまり女性に興味を示さないから、興味がないんじゃないかしら」
「へえ…あんまり笑ったりもしないんですか?」
「そうねえ…笑ったところは見たことがないわね」
「そうなんですか」
一緒に働いている看護師さんすら、笑ったところを見たことがないんだ。
笑ったら、もっと似ているのかな…
「採血はこれで終わり。何かあったらナースコールを押してね。また巡回にくるわね」
「わかりました」