恋愛境界線

☆☆☆☆☆

「暇だなあ…」

入院生活2日目。
病院は暇!この一言だった。


腕には点滴が繋がれているし、身体が弱っているから安静にって言われてるし。
とにかくやることがない。


”本郷先生”、忙しいのかな…
昨日はあれから来てくれなかったし。

暇だと色々考えてしまう。
ほとんどは”本郷先生”のことなんだけど。



「赤坂さん、採血の時間ですよ~」

ドアのノックとともに、私の担当看護師の今田さんが入ってくる。
ベテランの看護師さんなので手際よく準備をして、私の血管に注射針をさす。

「”本郷先生”って忙しいですか?」

聞くつもりはなかったのに、そんな言葉が口からこぼれる。

「本郷先生は今日は外来に出てるわよ。今日も忙しいそうで、お昼ご飯も食べれないほどに」

「そんなに忙しいんですか?」

「いっつもよ。先生方は慣れているから大丈夫よ」

針を抜いて患部を止血する。
さすがベテランの看護師さんで、全く痛くない。

「赤坂さんも本郷先生のファンになっちゃった?」

「い、いえ私はそんな…人気なんですか?」

「あの容姿でしょう?ちょっと堅物なところはあるけど、やっぱり女性の患者さんから人気よ。でもあんまり女性に興味を示さないから、興味がないんじゃないかしら」

「へえ…あんまり笑ったりもしないんですか?」

「そうねえ…笑ったところは見たことがないわね」

「そうなんですか」


一緒に働いている看護師さんすら、笑ったところを見たことがないんだ。
笑ったら、もっと似ているのかな…


「採血はこれで終わり。何かあったらナースコールを押してね。また巡回にくるわね」

「わかりました」

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