私が髪を切った理由

5月

｢あっつ〜…｣
｢だな。｣

長い髪をパタパタさせながらユイが項垂れる。
それもそのはず。
まだ5月に入ったばかりだというのに既に20度を超える気温に学校のクーラー管理が追いついてない、という状況。
入学してもうすぐ1ヶ月。
あれからクラスの連中とも打ち解けることができた。
それも、あの瀬戸とかいう男のおかげなのだが。
この気温ともう1つ。
最近憂鬱に感じていることが。
それはー。

｢おはようございます、立花さん｣

毎朝瀬戸からの挨拶だ。
瀬戸はクラスのみんなに1人ずつ挨拶しているみたいだか。
無視しようとしたら目が合う度挨拶されるものだから、挨拶を返さざるを得ない。

｢…はよ｣
｢おはようー、瀬戸くん｣
｢おはようございます、高岡さん｣