三坂くんはまちがってる
プロローグ




「あーほら、クラスにいるじゃん

山田って子」


高校二年生、5月下旬。


自分の名前が教室から聞こえてきて
思わず扉の前で立ち止まった


放課後、机に財布を忘れた。

盗まれでもしたら大変だと急いで戻ってきたのはいいものの

これじゃあ中に入れない。



「いっつもぼっちな子でしょ、下の名前しらないけど」

語尾にカッコワラがついてる。たしか井上さん。

私がクラスメイトにどんな風に見られてるのか
だいたい想像がつく言い方だった。


「俺その子、苦手なんだよね」


「へえ三坂が?」

「珍しいね、三坂苦手なヤツとかいるんだ」


「…なんつーか、ワタシはひとりが好きなんです、人と関わりたくないんです、ってオーラ全開で

話しかけたいと思わない」



トゲのある言い方。

でもそれは、私が高校一年生の時から言われ続けてきたであろう私の評価。

当然といえば当然で、

むしろ私がそう思われるように振る舞っていたようなもので。


だから、三坂くんからそう言われることも
何ら今までと変わらないこと、
なはずなのに


何故かすごく心が痛くなるのは

彼が、どんな人にでも明るく笑う、人気者の男の子だったからなのだろうか。









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