三坂くんはまちがってる
私の熱心な説得によって
兄はなんとか食い留まってくれた。
父にも死ぬ気で仕事を探せと念を押し、
ワクワクもウキウキもしない
わたしの高校生活が始まろうとしていた。
*
___入学式前日、
私はベッドの上で頭を悩ませた。
バイト厳禁な高校で、バイトをする方法。
いかなる理由があっても、
高校生がアルバイトをしてはいけない。
そんな厳しすぎる規則が
私の通う高校にはあった。
そりゃ当然、父が仕事を辞めるとは思ってもいなかったから そんな規則私には関係ないと高を括っていた。
今なら思う。
…その規則すぐにでも蹴破りたい。
「バイト…うーん…バレなければいい話だけど、
絶対バレないなんて保証はどこにもないし…
もしバレたら進路に響くし…」
いや、待てよ。
私の頭に、
一筋の光が線を引いた。
バレなければいいんだ。
絶対にバレなければ。
そうするにはどうすればいい?
高校での容姿と
バイトでの容姿
似ても似つかないくらいのギャップがあれば
もし先生が私のバイト先に来たとしても
私だとは、バレない。