三坂くんはまちがってる
だってほら、よくあるじゃん
少女漫画とかでよく。
学校では地味で陰気臭いのに、
メガネを外したり前髪を切るだけで
めちゃくちゃ変身するっていう
あの王道設定が。
生かせる。
あの王道設定、
わたしのバイト生活に生かせるかもしれない。
ベッドから勢いよく立ち上がり、
兄の部屋に直行した。
目的は一つ。
「お兄ちゃん、メガネ貸して!黒縁の、レンズ入ってないやつ!」
「ノックくらいしろよ…
なに、なんでメガネなの」
兄は伊達メガネをよく付ける。
オシャレのつもりなのか何なのかは知らないけど
わたし的に全然似合ってないと思う。
「学校に付けてくの。
芋臭くて地味な女になるためには必要なの」
「いも…はあ?」
「詳しいことはいーから!
とりあえず高校3年間はこれ私に使わせて!」
机に置いてあったその黒縁メガネを手に取り言った。
「まあ…もう使ってないからいーけど」
「やった」
「あんまり変なこと考えんなよ、お前は」