三坂くんはまちがってる




だってほら、よくあるじゃん
少女漫画とかでよく。


学校では地味で陰気臭いのに、
メガネを外したり前髪を切るだけで
めちゃくちゃ変身するっていう

あの王道設定が。


生かせる。

あの王道設定、
わたしのバイト生活に生かせるかもしれない。


ベッドから勢いよく立ち上がり、
兄の部屋に直行した。

目的は一つ。



「お兄ちゃん、メガネ貸して!黒縁の、レンズ入ってないやつ!」

「ノックくらいしろよ…

なに、なんでメガネなの」


兄は伊達メガネをよく付ける。
オシャレのつもりなのか何なのかは知らないけど

わたし的に全然似合ってないと思う。


「学校に付けてくの。

芋臭くて地味な女になるためには必要なの」


「いも…はあ?」

「詳しいことはいーから!
とりあえず高校3年間はこれ私に使わせて!」

机に置いてあったその黒縁メガネを手に取り言った。

「まあ…もう使ってないからいーけど」

「やった」

「あんまり変なこと考えんなよ、お前は」



< 5 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop