三坂くんはまちがってる







「浮かない顔してるね

なんかあった?」



「えっ」




コンビニの陳列棚をぼーっとみていた視界に、
不意に草薙(くさなぎ)さんが入ってきた。


ふわふわした茶髪と、
両耳の黒ピアスがよく目立つ。


兄より一つ年下の、大学一年生らしい。

初めて見た時、なんだこのイケメンって思ったけど

今じゃ能天気でどこか抜けてるトイプードルにしか見えない。


「いつもより元気ない気がして」

「そう見えます?」

「うん、どうしたの

お兄さんに話してごらん」

「なんですかその変態みたいな言い方」

センター分けした長い前髪をかきあげる。

学校だと、この長い前髪を顔面に垂れ流して、
全く表情が見えないようにしているから
どこの貞子かと自分でも思う。


「…実はその、クラスの男の子に
わたし良く思われてないみたいで」


「へえ、しおりちゃんが?
絶対そんなことないでしょ、可愛いんだから」


それがそんなことあるんです。地味臭いから。

なんて流石の草薙さんにも言えやしない。


「いやいや…とにかくその、なんだかすごく傷付いちゃって」

私らしくもない。

非難の言葉にいちいちヘコむだなんて。

「そういう事ね。そっかそっか

それじゃあ今日はお兄さんがアイスを奢ってあげよう」

「えっ?!いいんですか」

「…まさかそれ目的で話したわけじゃないだろうね」

「そんなわけないじゃないですか〜!」




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