三坂くんはまちがってる
私が選んだバイト先は、
近場のコンビニだった。
学校からも離れているし、
徒歩圏内ですぐに働ける。
安月給だと思われがちなコンビニだけど、
私の働く店舗は時給950円という割に合ったお値段。運が良かった。
バイト初日、私を指導してくれたのが草薙さん。
初対面の時から優しくしてくれて、面白い男の人だった。
一年も経てば、すっかり仲は深まって。
今じゃ何度かご飯も食べに行ったりする関係だ。
だからって、恋愛に発展する訳では無いけれど。
うん。ないない。
「はい、ほら抹茶アイス」
「うわ〜やったー!草薙さんイケメンすぎます」
「ほらそうやっておだてて調子乗らす
ずるいなあしおりちゃん」
「だってほんとのことですもん」
「…うーん」
不意に、草薙さんが私をマジマジと見つめてきた。
バイト終わり、スーパーの外にあるベンチで座って駄べる。草薙さんとの日課だった。
今日もいつもと同じようにして、ベンチに座った。だけどひとつ違うのは、抹茶アイスが私の手にあるということ。
しかもタダ。格別の味だ。
「どうかしました?」
「やっぱり、しおりちゃん勘違いなんじゃない?」
「え?」
「男の子によく思われてないって話。
しおりちゃん、そんな要素1個もないよ」