教えて、世界。【短編】
いや、何もかもわからないわけじゃない。ただ薄い色のビーズの見分けがつかなかった。

ビーズの色の事で母さんと話が噛み合わなくてその時初めて僕は人と違うかもと言うことを思い始めたんだ。

その後、ちゃんと検査しようってことになってその結果、僕はやはり色の見え方に問題があることが分かった。

だけど当時、小学生だった僕は眼科の先生の説明を聞いてもピンと来なかった。

ただ将来なりたくてもなれない職業があるって聞いて、もしかしたら僕はニートになるしかないの?ってぼんやりそんな事を考えていた。

別に消防士になりたかった訳じゃない。

別に電車の運転士になりたい訳でもない。

ただ、この世界からはじき出された気がしたんだ。

前に社会見学で行ったネジ工場で規格外の物は検査機から自動的に外されていく様子を見た事がある。

ほとんどがそのまま運ばれていくのに稀にはじき出されるネジがある。

不良品だ。

僕もあの時はじき出されたネジになったんだなって、そんな風に思ったんだ。

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