あなたの青 わたしのピンク
ツアーとリハーサルばかりのハルの部屋には

食べるものもあまりなく

私も料理をする気になれず

空腹に耐えられなくなった二人は

ハルの部屋の近く

リハーサルスタジオの近くにある

ハルがよく行くというカフェに行くことにした

ハルは私を東京駅まで見送った後、そのリハーサルスタジオでリハーサルを

することになっていた

私は旅行鞄

ハルは背中にサックスの入ったケースを背中に背負い

手を繋いで歩き始めた

スタジオはマンションのある通りから

駅とは反対の方に向かって歩いていくと

四車線の大きな通りにぶつかり

その通りを渡った向こう側にあった

通りに面した四階建ての一階が店舗になっている

ビルの地下に続く階段を下りると

そこに小さなホールがあり

その奥に小さな入口がある

入口の前には学校の教室にあるような

掲示板があって様々なバンドのポスターが

隙間なく貼ってあった

スタジオの入口近くに

大きな青を基調としたポスターが貼ってある

青でも透明感の強い青で

とても美しく目を奪われた

よくみるとそこに映っていたのは

なんとハルだったのだった

私は何も言わずハルの手を握る自分の手に力を込めて握ると

彼を引っ張る様にそのポスターの前に立った

隣りに本人がいるのに

ハルを見るよりも

ポスターのハルから目が離せなかった

暫くハルは何も言わず私の隣りに一緒に並んで立ち

一緒にポスターを見つめた

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