あなたの青 わたしのピンク
ハルが東京へ行ってしまった時

寂しくて

恋しくて

必ず東京へ行こうと思っていた

その気持ちはとても強かった

いつしか月日が流れ

この生活に慣れてしまうと

今の名古屋での生活に不便や不服を

感じない分

新しい生活を始める勇気がどこかへ

いってしまったようだった

代わりに

両親や仕事

会社の同僚など

一緒にいる人達と離れて

自分は上手くやれるのだろうか

東京でハルがいないとき

東京に知り合いのいない私は

一人で大丈夫なのかなと

恐くなったしまったのだった


それなのに

今日はどうだろう

初めて一人で上京した時と違い

バスを待つあいだも

何だか名古屋に居る時と同じ気分でいる自分がいた


やがて

バスが到着して

考え事をしている間に伸びた

バス待ちの人達を載せて

バスはゆっくりと走り始めた

車内は休日らしくほぼ満員で

座席に空きは殆どなかった

前の席には

髪に白い物が混じり始めた

年配の夫婦が座っていた

特に会話をする訳でななかったけど

並んで座る姿に

違和感がなかった


バスは東京駅を出ると

銀座に向かった

以前地下鉄で銀座に来たときは

冷たい雨の降る日で

ハルはリハがあったので

独りで傘をさしながら

お店を回って歩いたっけ

けれど今日はとても良い天気で

銀座のビルはハルの日差しに輝いていた

前の夫婦は時々

ビルを指さし落ち着いた声で

会話を楽しんでいた

その仲の良さをみていたら

自分もいつか

こうやって誰かと一緒に

休日に出掛けてみたいそう思った

そしてそれは

やっぱりハルがいい

そう改めて思ったのだった
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