あなたの青 わたしのピンク
次に何かイベントがあった時
代わりに彼女が自分のファンに
SNSで俺の活動を拡散してくれるのだ
お互いのファンに拡散することによって
お互い新たなファンを作っていく
暗黙のルールのようなもの
勿論愛果はそんなこと知らないから
初めてアイドルとのツーショットを
アップしたときは本気で怒っていたっけ
もちろん、愛果が心配するようなことは
全くない
愛果が怒っているのを知って
初めてその事に気がついたくらいに
仕事のことで頭がいっぱいだ
自分の夢を一日でも早く叶えたい
その為にできることは
全部自分でやってみたい
毎日スタジオで演奏していると
頭の中に思い浮かぶ景色がある
それは
夜のマンハッタンに浮かぶ橋の見える
川辺で思い切り演奏している自分
音が川面に反射して反対側の岸にいる人に届いて
少し俺の方を見つめる
川を滑る様に進む船が鳴らす汽笛と絡まって
音が新しい音になって
俺はその音に感動して震えるんだ
その景色に似合う演奏ができるように
一日でも早くなりたい
いつもその事しか考えていなくて
その演奏を一番に見てもらいたいのは
愛果君なんだよ
今は学生時代の知り合いより
収入も少ない
中にはそんな俺を見下すやつもいる
そんな奴らに
愛果を笑いものにさせたくないんだ