あなたの青 わたしのピンク
ホントはその晩愛果のいる名古屋へ帰りたかった

でも

次の日に仕事が入っていた

初めての単独全国ツアーの最中で

3日後の東北でのライブのリハだった

夏から始まったツアーも終盤に差し掛かっていた

お陰様で評判もとてもよく

実は次の仕事の話も決まりはじめていた

上京して三年目の大切な時だった

音楽だけで生活できるようになって

制作の時間も作れるようになってきた

ようやく今回のツアーでの演奏の曲を

レコーディングする話も決まりそうになっていた

レコーディング用のデモを制作する大切な日だったのだ

「ハルの曲早く聴きたい。」

そう無邪気に受話器の向こうで話す愛果

愛果も仕事が忙しく

東北までは来れないらしい

俺は正直に愛果にレコーディングの話をした

すると愛果はとても嬉しそうな声をあげた

「絶対買う。待ってる。」

その言葉で俺はとても幸せな気分になった

そして

俺の夢を心から応援してくれる愛果が

たまらなく愛しく

そしてとても恋しかった

こんな風に自分の思い通りにいかない夜

隣りに彼女がいて

一緒に食事をしながら今回の話を笑い飛ばすことができたら

それだけで

きっと俺は前に向かって歩いていける

そう心から思った

愛果の声が元気になったので

俺は受話器を置いた

そして翌日の為に最終チェックを始めたのだった
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