あなたの青 わたしのピンク
「何してるの?」

全く予想していなかった声に

俺は思わず声をあげてしまった

そしてそっと彼女を振り返る

仕事とは違う少しくだけた姿の彼女がたっていた

俺を見上げ微笑む

「驚いた?。」

そう言って再び微笑む

「どうしたの?」

俺は想定外の出来事にそれ以外の言葉が見つからなかった

「明日からツアーで寂しくないかなって思って。

送りだしてくれる人もいないと。」

そう言って俺が腰掛けていた椅子の隣りに座った

以前俺のファンの事でトラブルがあってから

愛果の事はトップシークレットにしていた

関係者以外の人達には

困った俺は近くにいたバンドメンバーの顔を

チラリとみる

俺と目が合うのを恐れて目が合う瞬間に目線をそらし

それぞれの事を始める振りをした

一番古いドラマーは俺に背をむけたが

ちらりと見える顎は明かに笑いをこらえた

動きをしていた

誰も助けてくれないと悟ると覚悟した俺は

彼女に話かけた

愛果の存在を隠すことだけを考えて

「ありがとう」

これは勿論、社交辞令

そう聞くと彼女は嬉しそうな顔をした

「会場の入り口はもう人でいっぱいだったよ。

可愛い女の子ばかり。」

以前にSNSでツーショット写真をあげた時

彼女のSNSは彼女を否定する言葉で

炎上したはずだった



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