あなたの青 わたしのピンク
会場が開くまでまだ時間があった

初めてハルを見た時

ライブハウスの席には

空席がぽつぽつあった

名古屋の郊外の小さなライブハウスで

お酒と食事をしながら音楽をというお店だったので

今日の様にハルを見に来るというよう

食事とお酒を目的にしたサラリーマンや

会社勤めの人達に交じって彼の音楽を聴いていた

あの日から随分経ってしまった

まさか東京の高層ビルが立ち並ぶこんな

場所でハルのワンマンが行われることになるなんて

私は楽しそうに地方でのハルのライブの話をする

前に並ぶ女性の顔をそっと見つめた

「北海道の飛行場からね。」

そう話を続ける彼女

話しかける女性との会話から

彼女達がツアーに合わせて全国を回っていることがわかる

そして

明日からのアジアツアーにも行くつもりらしく

移動方法や、予定などを楽しく話始めた

私はその話を聞きながら

嬉しくて誇らしく感じた

ハルの演奏が私と同じ様に沢山の人達を幸せにしているのだと

その時だった

列の遥か前の方会場の入り口近くが何やら騒がしくなった

数人の男性に挟まれた少し派手な服装の女性が見えた

彼女の両側にいる男性に大きな声で何やら話をしている

すると二列前の女性が隣の女性に

「彼女ラジオでハルと一緒にパーソナリティをしてる人じゃないかな。」

その言葉と、その入口で騒ぐ人達が気になり

皆そう話す彼女を見つめた

「やっぱりそうだ、公開放送の時ハルと一緒に話してたもん。」



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