あなたの青 わたしのピンク
店の入り口で起こる騒ぎだ

目指す場所で起こる出来事だから

皆自然とその騒ぎに注目してしまう

「やっぱり何かあるのかな。」

先ほどまで前回のツアーについて

楽しそうに話をしていた前の二人がそう囁きあった

その言葉に私は心臓を握りつぶされた様に

おかしな鼓動を刻むのが判った

彼女達が話しているのはそう

ラジオのパーソナリティの彼女がハルの恋人ではないか

ということだ。

そう話かけられた彼女がえー!!と返事をする

「だって、ライブの前に楽屋に入るなんて親しい人じゃないと

できないよね。」

そう言って二人で顔をみあわせる

そしてまた入口のほうへと視線をうつした

わたしもつられてそちらを見る

ハルと前回あったのは、お正月の終わりの事だった

それからかなり時間が経過してしまった

勿論毎日連絡は取り合っていたけど

それでも私はやっぱり寂しい

眠れない夜も何度もあった

彼のいない日曜の夕方

一人で買い出しに行くのがどうしても辛い時がある

肩を寄せ合い買い物をする恋人同士

小さな子供をつれた夫婦

見かける度にハルの手を探してしまうのだ

男性だってきっとそんな時があるはずだ

離れているだけ本当はとても不安だ

近くにいることができないから

なおさらもし、ハルの心を奪ってしまう人が表れたら

私には何もできないから

前に並ぶ彼女たちと一緒に悲しい気持ちで

成り行きを見守るしかなかった



< 48 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop