初恋の花が咲くころ
「咲、おかえり~!」
約束通り、空港まであやめが迎えに来てくれた。
「あれ、フランス支社の編集長もいたんですか」
小さな荷物一つで一時帰国した咲の隣には、桐生がいた。自分から離れないようにしっかりと、咲の手を握っている。
「あやめ、久しぶり~!」
あやめとハグをするために、無理やり桐生の手を離す。
「寂しかったー!」
「私も!」
しばらくの間、二人は空港のロビーで抱き合ったままだった。
「まるで恋人同士ですよね」
いつの間にか桐生の隣にいた、相変わらず明るい髪の毛の棗が言った。
桐生の顔が険しくなる。
「お前、従弟だったんだって?」
「あ、はい」
口止めしたのも俺っす、と悪意のない顔で棗は笑った。
「大物だな、お前」
入社して一年も経たないうちに、本社に異動なったのも認めざるを得ない。
「俺は、除外されますが…」
棗が、未だに抱き合っている咲とあやめを見て言った。
「あやめ姐さんは、とんでもないライバルっすよ」
「覚悟はしてる…」
桐生はこの先もまだまだ試練が続くことを予想して、思わずため息がもれた。
*END*