きみはお菓子よりもあまい

 ◇

 部活は基本的に週に一回。
 買い出し当番がまわってこればその週は二回。

 学祭前になると本番を想定したメニューで練習が始まる。

「今年の学祭は。クレープを売ります」
 多数決で決めたメニューだ。

「ひなたは。売り子ね!」
「う、うん」
 副部長の薫(かおる)はキビキビと動き、決断力もあり、料理の腕もいい。
 わたしは薫が部長に向いてると思うんだけどなあ。

「いっぱい男子連れてきて」
「え? でも、女の子の方がクレープって買ってくれそうな――」
「ひなたが男子担当してくれたら間違いなく売上あがる! 去年もそうだったしね〜」
「……わかった」
 勢いにまかせてオッケーしたものの。
 クレープを男子に売り込むなんてハードル高くない?
 大丈夫かなあ。

「ひなた先輩が生地焼いたら破れるしね」
「盛り付けも売り物になんないよ」
 …………!
「ちょっと。そういうこと言わないの」
 薫が注意したのは、2年だった。
 2年の中にはわたしのことをあまりよく思っていない子もいて、
「でも、薫先輩。材料無駄にされちゃ赤字出ますよ?」
「ひなたに謝って」
「……イヤです」
 2年は顔を見合わせたあと、
「なんでひなた先輩が部長なんですか」
「薫先輩がよかったです!」
 口々に不満を漏らした。

 わたしもそれは思うことだし。言われても仕方ない。
 だけど、面と向かってそんな意見を聞くのは辛いなあ――
「アンタらだって下手くそじゃないですか」
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop