名もない詩集

10年後の真夏のうた

空は
どこまでも高く
青く澄んで

雲は風に
流されて

照りつける
日差しが
やわな心を
砕いていった

元々が
ボロボロだから

たくさんの
ヒビの入った
ガラスだから

軽く肘を
当てられただけ

それだけで
宙を舞う

透き通って
見えませんか

そこに
私の心が
ありました

今は残像すら
消えそうで

私自身がもう

気配ですら
ないのです

夏にさらわれて

彼方へと
さらわれて

陽炎の
向こうに
幻となり
燃えつきて
消えました

まるで灼熱の
線路に落ちた
一滴の
水のようです



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